研究概要 |
本研究は、造血器腫瘍細胞の浸潤に伴うヒト腫瘍血管新生の実態とその機能と分子メカニズムを明らかにしうる動物モデルを開発し、さらに腫瘍血管を標的とした新たな造血器腫瘍の治療法の開発と生体内での効果の評価を行うことを目的として行われた。ヒト骨組織をNOD/SCIDマウス皮下へ移植し、さらにヒト白血病・骨髄腫細胞を移入し、一定期間後、移植骨髄における細胞浸潤と血管新生について解析した。その結果、白血病・骨髄腫細胞の移植骨への浸潤とともに血管密度の上昇が認められ、その新生血管は、既存の骨髄の血管の洞構造と比して、より腫瘍血管に近い構造を呈した。次に本モデルと固形腫瘍での腫瘍血管新生の分子機構における差異を明らかにするために、Angiopoietin、VEGFとその受容体群の発現ならびにその活性化について検討した。その結果、血液腫瘍の際の血管新生には、VEGFよりもAngiopoietin1,2の発現亢進がISHレベルで観察された。さらに、現在これらに共通の細胞内シグナル伝達分子としてPhosphatidylinositol-3 Kinase (p85α)に着目し、その発現と機能を検討している。また腫瘍血管を標的とした新たな造血器腫瘍療法の開発と生体内効果の評価を目ざして、Tek,Flt-1,FGF,Eph受容体細胞外領域にヒト免疫グロブリンFc領域を融合させた優性阻害型蛋白を3種同時に発現するTricystronicベクターの作成を行った。
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