研究概要 |
T細胞はα/β型T細胞とγ/δ型T細胞に分かれ、ヒトにおいては、腸管、肝臓に見られる。他研究者らにより、Tリンパ芽球性リンパ腫・白血病、肝臓、皮膚にγ/δ型T細胞リンパ腫が局在するとことが報告されていた。これらの細胞は、TCRβF1陰性であり、骨髄・胸腺、また肝小葉にあるVδ1T細胞、皮膚にあるとされるVδ2T細胞が腫瘍化したものと考えられている。材料:肝臓(6例)、消化管(7例)、鼻腔(15例)、皮膚(20例)、リンパ節(30例)のT,NK/T細胞リンパ腫(ATUL, CTCLを除く)とされている症例に関し、その凍結細胞よりDNAをとりTCR遺伝子の再構成をサザンプロット法にて検討した。その結果、TCRJδ1のみの再構成がみられた症例は皮膚の1例のみであり、Vδ1Jδ1/Vδ2Dδ3の再構成を示した。その細胞組織学的性格はCD30、CD4陽性、TCRβF1陰性、γ/δ陽性、EBV感染陰性未分化大細胞性リンパ腫(ALCL)であった。そこで、皮膚、リンパ節のCD30陽性リンパ増殖性疾患に対し詳細に検討を行った。皮膚ALCLの8例においては、他4例はTCRβ鎖の遺伝子再構成がみられた。全身型21例では、ALK陽性ALCL9症例中3例(33%)、ALK陰性9例中1例(11%)にTCRβ鎖の再構成を認めた。免疫組織学的にALK陽性例でβF陰性g/δ陽性は5例であり、ALK陰性例では、βF1陰性γ/δ陽性例は2例含まれており、γ/δ型の表面形質を示す例が多くみられたが、遺伝子型はγ/δの再構成例がなく、NK、null細胞例が多くみられた。これらより考え、末梢性T細胞型リンパ腫には、遺伝子学的にγ/δ型がごくわずかであることが確認された。γ/δの抗体の特異性に問題があることも理解できた。また、表面形質にてβF1陰性γ/δ陽性リンパ腫例は、遺伝子学的にγ/δ型T細胞リンパ腫が少なく、α/β型T, NK, null細胞リンパ腫を示すものがあることが確認出来た。今後T、NK/T細胞リンパ腫における細胞同定には、十分な注意が必要であると考えた。
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