研究概要 |
1.IgA腎症組織学的予後判定基準(厚生労働省・日本腎臓学会編IgA腎症診療指針第2版)の改訂案 IgA腎症に関する臨床・病理情報をデータベース化する方法を考案し、データベースの構築を組織分類へどの様に応用してゆくかを検討した。症例の収集では、倫理委員会の承認を得た後、全国大学病院13施設(内科254例、小児科14例)と、国立病院機構腎ネットワークから内科275例、小児科100例のIgA腎症腎生検材料が収集された。IgA腎症組織分類の改訂に関しては、現行の分類における予後調査を、観察期間でのCr増加率(%)と透析導入率を指標にして、実用性の観点からその組織学的判定基準を再検討した結果、改定点を絞ることができた。一方、腎生検における各病変パラメーターの臨床予後(蛋白尿予後と腎機能予後)への影響をオッズ比でしめし,ステロイド剤治療群と非治療群を比較して,各病変のステロイド剤による反応性を検証した。また、蛋白尿増悪と腎機能悪化の予測に有効な病変パラメーターの回帰係数を用いて統計学的な予後予測式を作製した。以上の研究成果により、改訂の原案を組織学的重症度分類として提案した。 2.組織診断の国際的標準化に関する海外研究者との共同研究 申請者城、冨野を含む28人の世界の腎病理医と臨林医がオックスフォードに集合し、IgA腎症組織分類作成のための病変パラメーターの選択と病理データベースの構築法を提案した。北米、アジア、ヨーロッパから300症例(成人250例、小児50例)の腎生検材料が収集され、13人の腎病理医が共通のスコアーシートを用いて個別に診断した。その定量的病理組織診断の再現性に関する成果を、2006年2,月の米国病理学会と10月の米国腎臓学会期間中に開催されたIgA腎症国際病理組織分類に関する会議において発表し参考資料とした。蓄積された病理データと臨床データとの照合により分類に関する原案を作成中である。
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