研究概要 |
国際甲状腺組織登録バンクの設立および運営に参画し、現在までに甲状腺がん手術小児症例はチェルノブイリ周辺ですでに2,000例を越え、局所リンパ節転移や肺などへ遠隔転移を有する患者が200例以上存在する。これら甲状腺手術標本からがん部、非癌部からDNA、RNA抽出が600例近く終了し、遺伝子解析がスタートしている。我々はこの組織バンクから組織、核酸の分与を受け継続的に遺伝子解析や病理組織学的解析を行い、被曝線量との相関や地理的特異性など分子疫学的な解析を進めている(J Natl Cancer Inst 97:724-732.2005)。 (1)サンプル収集・データの保存 急増している成人甲状腺癌の病理組織の収集保存をあらたに行っている。また集積されたパラフィンブロックからマイクロアレイの作成を行い効率的な解析の準備を行っている。 (2)ret/PTC再配列パターンの解析 遺伝的・環境的背景を同じくする自然発症群でret/PTC再配列パターンは被曝群と有意差はみられず、被曝に特異的な遺伝子変異の存在は確認できなかった。 (3)Wnt経路:β-catenin、APC、cyclin D1、Pin1 Pin1はβ-cateninの蓄積を介してcyclin D1を過剰発現させる最近発見された重要な核内蛋白であるが、セミパラチンスク核実験周囲やチェルノブイリ原発事故汚染地域に発生した甲状腺腫瘍でのWnt経路活性化の関与を検討し、乳頭癌でのcyclin D1の発現が高率でありPin1の過剰発現のあることを見出した(Histopathology 47:248-256,2005,J Pathol 202:446-455,2004)。 (4)BRAFについて 甲状腺癌組織バンクから供与を受けた試料を用いてチェルノブイリ小児症例ではBRAF変異率が低いことを明からにした(J Clin Enbocrinol Metab 89:4280-4284,2004)。
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