env-pXラットでは、骨髄由来のT細胞が胸腺で分化成熟する過程において何らかのセレクション異常が生じ、自己免疫性血管炎が発症すると考えられている。発症前のenv-pXラットにwild type血管内皮細胞を免疫することにより、血管炎の発症が促進された。このことから、env-pXラットの血中には自己の血管内皮細胞に反応し血管炎を惹起するT細胞が存在することが示唆された。次に、免疫ラットのリンパ節細胞をin vitroでwild type血管内皮細胞を用いて繰り返し刺激することにより、自律性増殖を示すCD4陽性T細胞(PC4)を得た。PC4をwild typeラットに静注したところ、肺に血管壁の破綻と周囲への炎症細胞浸潤を伴う血管病変が確認された。以上より、env-pXラットから自己の血管内皮細胞に反応し血管炎を惹起するT細胞を樹立できたと考えられる。PC4はT細胞受容体の使用頻度がVβ8.2、8.6、16に限られたオリゴクローナルなT細胞集団であり、そのサイトカインプロファイルはIFN-γとIL-2が陽性、IL-4とIL-10が陰性のThlフェノタイプを示した。血管内皮細胞と共培養することによるPC4の増殖はMHCクラスIIに対する抗体により完全に阻害された。しかしながら、この共培養系において血管内皮細胞はMHCクラスIIを発現しておらず、抗原提示細胞として機能しているのはPC4自身であることが明らかとなった。以上より、PC4を用いて血管炎の標的抗原を明らかにすることができると考えられる。
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