がん関連遺伝子のプロモーター領域に見られるCpG配列のメチル化は、遺伝子を不活化する機構の一つであり、発がんの主要なプロセスを担っている。メチルCpG結合(MBD)蛋白は、がん関連遺伝子の高度メチル化プロモーターに特異的に結合し、転写抑制複合体をリクルートする。本研究では、1)MBD4の転写抑制機構を明らかにすること、2)MBD4の相互作用蛋白として単離されたRFPとMBD4の関係を明らかにすることによって、DNAメチル化を介したがんの発生、進展のメカニズムを探ることを目的とした。 本研究では、これまでDNA修復蛋白と考えられてきたメチルCpG結合蛋白MBD4に他のMBD蛋白同様、転写を抑制する活性があることを見出した。MBD4は、メチルCpG配列に結合し、直接、HDAC1、Sin3Aなどのコリプレッサーをリクルートすることによって、ピストンの脱アセチル化を促し、転写を抑制する。がん関連遺伝子CDKN2A、MLH1のメチル化プロモーターにMBD4が特異的に結合するという事実は、MBD4がこれらの遺伝子の転写抑制になんらかの形で関与していることを強く示唆する。また、MBD4とその相互作用蛋白RFPの結合は、転写抑制活性を増強することから、RFPが高レベルで発現する精子形成、胚発生、腫瘍形成などの時期でメチルCpG配列を介した転写抑制において重要な働きをしている可能性が示唆され、今後の研究の進展が期待される。
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