C末端にFLAG標識したHB-EGF(C-FLAG-HB-EGF)を発現するcDNAをpcDNA3.1に組込んだベクターを作製し、腎上皮MDCKに導入しG418で選択し安定的に発現する細胞株を樹立した。この細胞にMT1-MMPを発現するベクターを導入し、MT1-MMPにより特異的に切断される断片を確認した。また、このMT1-MMPによるプロセシングが既知のMMP阻害蛋白質であるTIMP-2やTIMP-3を細胞に処理すると断片の産生が抑制され、一方、TIMP-1では抑制されないことを確認した。この結果はHB-EGFのN末端部のプロセシングがMT1-MMPに依存することを強く示唆するものである。 次に、MT1-MMPによるHB-EGFのプロセシング部位が既知と同一か否かを検討するために、HB-EGF-C-FLAG/MT1-MMPを発現するMDCK細胞(1x10^9)は1%CHAPSを含むTris pH7.5/0.5M NaCl/0.005%Brij-35で可溶化し、切断断片を抗FLAGモノクロ抗体カラムで精製した。精製蛋白質はエドマン分解法にてN末端アミノ酸配列を確認した結果、これまでの報告されている部位よりさらに下流のHB-EGFのヘパリン結合部位の中心部であった。さらに、上記の切断部位の確認を行うため、精製したHB-EGFと膜ドメインを欠損したMT1-MMPを試験管内で反応させ、産生した切断断片のN末端アミノ酸解析を行ったところ、興味深いことに、細胞表層での切断部位の5残基上流が切断部位として同定された。以上から、HB-EGFのN末端の切断はMT1-MMPともう一つ別のプロテアーゼが関与することが明らかとなった。さらに、この細胞表層由来のMT1-MMPによるプロセシングの役割などについての解析を細胞生物学的な手法を用いて解析を行っている。
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