研究課題
基盤研究(C)
血小板由来増殖因子β受容体(PDGFR-β)欠損による脳の脆弱性を明らかにするため、PDGFR-βの発現を中枢神経系特異的に抑制するconditional KO mouse(Nestin-Cre/PDGFR-βconditional KO mouse)を開発し、以下の解析を行なった。1)モデルマウスの開発所属する研究グループで作製した、PDGFR-βゲノムに変異を導入したマウス個体(floxed mouse)が、当初の計画どおりにCre recombinaseの導入によりPDGFR-β蛋白発現が抑制されるモデルである事を示し、論文として報告した(次項参照)。2)傷害モデル実験(1)血管の透過性亢進による浮腫を来たし、さらには周辺の神経細胞のapoptosisを誘導することができるmodelであるCryoinjuryを上記KO mouseとコントロールマウスに行い、脳の脆弱性を病変の計測およびアポトーシスマーカ等を用いて解析した。(2)NMDA等の興奮毒性を有する薬物を脳に直接投与し、Cryoinjury modelと同様に解析した。(1)、(2)の実験では、いずれもNestin-Cre/PDGFR-β conditional KO mouseはコントロールマウスと比較して有意に病変の拡大が見いだされた。神経細胞で発現するPDGFR-βが神経細胞の保護因子として重要であることを、生体において始めて明らかにしたものである。結果はMouse brains deficient in neuronal PDGF receptor-β develop normally but are vulnerable to injury.という題目の論文にまとめ、the Journal of Neurochemistryにrevised versionを投稿中である。3)培養神経細胞を用いた検討スウェーデン・ヨーテボリ大学・解剖および細胞生物学研究所(鮒恵子教授)にて半年間の技術研修を行い、神経細胞および神経幹細胞培養技術を修得した。帰国、当講座で神経幹細胞培養を立ち上げ、Nestin-Cre/PDGFR-β conditional KO mouse由来の細胞を用いた研究を進め、神経細胞の分化、増殖にPDGFが重要な役割を果たす事を示唆する知見を得つつ有り、研究を継続中である。4)その他従来から行った、脳発達における新しい転写因子の役割に関する研究を終了し、論文として報告した。
すべて 2005
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