酸化ストレスと動脈硬化の関連については過去に多くの報告が見られるが、血管内皮細胞におけるCD36の発現と動脈硬化の関連をin vivoおよびin vitroで検討した報告は見られなかった。また、血管内皮細胞に発現したCD36が動脈硬化進行性に働いているのか、抑制性に働いているのかもわかっていない。あたらしい動脈硬化治療へのアプローチを模索する意味で本研究を開始した。 マウスやヒトの動脈をen faceに免疫染色した実験で、CD36は血管分岐部の内皮細胞に発現していたことから動脈硬化病変形成の初期の段階から病巣の進展に関わっていると考えられた。しかし、高コレステロール食を負荷しても、発現増加が見られなかったことやプラーク部分の内皮細胞、特にshoulder部分の内皮細胞に強く発現していたことから、ずり応力など血流因子の影響がより考えられた。in vivoでは血管内皮細胞での、CD36の発現はあきらかであったが、培養内皮細胞では、検出可能な程度にCD36の発現させることが困難であった。培養内皮細胞で、特異的にCD36の発現を促す因子を特定するために、さらなる研究が求められる。 また、ヒトの冠状動脈を用いた免疫染色では、線維性被膜の厚いプラークでは、泡沫細胞にはHO-1が強発現しており、CD36は深部の壊死物や少数の泡沫細胞に発現を認めるのみであったが、破裂をきたしたプラークで、泡沫細胞でのCD36の発現が増加しており、逆にHO-1の発現が減少していた。このことから、泡沫細胞におけるCD36の発現亢進が粥腫の不安定化に関与している可能性が示唆された。
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