研究概要 |
免疫系細胞には種々のC型レクチンが発現し、糖鎖を介するパターン認識レセプター(PRR)として微生物の捕足に働いている。我々は、いくつかのレクチンが単に微生物・抗原レセプターしてだけでなく、もう一方のPRRであるTLRと相互作用しその応答に影響を与えていることなど、レクチンの新たな機能を示唆してきた。本年度は、先に同定したヒトDC-SIGNマウスホモログファミリーの中のSIGNR1を中心に以下の結果を得た。 1)SIGNR1発現細胞において菌体刺激後のTLR4/MD-2のoligomerizationが促進されることを示した。 2)さらに、SIGNR1発現細胞においてE.coli刺激後の細胞内IκB-α分解促進を確認した。 3)欠失型LPSおよSIGNR1発現細胞を用いて、SIGNR1がLPS上のコア糖鎖領域非還元末端[GlcNAc]Glcを認識することを示した。 4)生体由来常在性腹腔マクロファージ(rpMφ)がSIGNR1依存的にFITC-dextranを結合し、かつこれがE.coli等のLPSによって阻害されることを示した。 5)rpMφを抗SIGNR1抗体で前処理するとS.typhimuriumに対するサイトカイン産生が顕著に減少することを確認した。 6)同ファミリーの中でC.albicansを認識するSIGNR3の単クローン抗体を作製した。この際、相同性の高いSIGNR1,3およびmDC-SIGNを発現する細胞を作製し、これらを用いてスクリーニングすることでSIGNR3特異的な抗体を選択した。 以上の結果より、SIGNR1はLPSを介してグラム陰性菌を認識し、更に細胞のTLR4応答を促進することで生体の自然免疫に関与しているものと考えられる。また、新たに得られた抗SIGNR3抗体を用いて発現パターンの解析が進行中である。
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