研究概要 |
AMSマウスの疾患責任遺伝子Nna1の生化学的および生物学的機能は解明されていない。Nna1のams変異は細胞死に関わり、小脳Purkinje細胞では完全脱落をもたらすが、他の神経細胞は部分的に細胞死の感受性が高まるのみである。ams変異がapoptosis関連遺伝子とどのように関わるかを知るためにFas(CD95)欠損を示すMRL/1prマウスと、ヒトbc1-2遺伝子過剰発現を示すトランスジェニックマウスで脳の変化を調べた。結果:1.MRL/1prと対照MRL/+マウスでは、脳重量に差はなかった。ams homozygosityが加わると対照は24%の重量低下が見られたのに対し1pr変異の共存下では18%(対照の75%)に留まった。2.bc1-2マウスは対照の10%の脳重量増加がみられた。ams変異によってbc1-2強制発現のない対照では20%に対し、bc1-2マウスでは16%(対照の80%)の脳重量低下であった。3.小脳の面積の変化をパラメーターとしても、1,2と同様に1pr変異またはbc1-2TGによりその減少が抑制された。4.1pr変異,bc1-2過剰発現共にams変異によるPurkinje細胞完全脱落に影響を与えなかった。考察:Nna1遺伝子の機能欠損でアポトーシスによる細胞死がおこるが、細胞種により死の様相が異なる。今回の実験データではNna1遺伝子がapoptosis調節機構に間接的に関与していて、その程度が大きいPurukinje細胞では集団全ての細胞死がおこるようである。結論:Purukinje細胞の生存はNna1に完全に依存している。ams変異により部分的細胞死感受性の高まる細胞群でapoptosis関連遺伝子とNna1遺伝子の相互作用が間接的であることが示唆される。
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