研究概要 |
膠原病疾患モデルマウスの疾患感受性を規定する候補遺伝子として同定され、その中で構造遺伝子多型に基づく蛋白多型を持つ因子、オステオポンチン(OPN)、に関し、コムギ胚芽を用いた無細胞蛋白合成システムにより多型蛋白を合成し、それぞれの蛋白の構造・機能に差異があることを我々は既に明らかにしている。一方で、生体においては、OPNの発現量に疾患好発系と嫌発系のマウス間で差異があることも示唆されている。そこで、OPNの質的差異と量的差異のいずれが、より疾患発症機序に強く影響しているのかを明らかにするため、a)合成蛋白を用いた各alleleのOPNの結合能の解析、b)各alleleのOPN cDNAをもつトランスフェクトーマの作成、c)OPN遺伝子座特異的コンジェニックマウスを用いた発現解析、d)トランスフェクトーマを動物モデルに移植することにより各alleleのOPNの発現量を上げて、疾患発症に至るか否かの解析をおこなうことを目的として以下の実験を今年度に行った。 (1)合成多型OPNによる細胞結合能の解析:96穴マイクロプレートをそれぞれのalleleの合成OPNで濃度勾配をつけてコートし、マウス由来マクロファージまたは腫瘍細胞株を短期培養、cyto ELISAの手法で接着細胞数を定量化し、結合アフィニティーの差異がどの場所の多型で規定されているのかを解析した。 (2)多型OPNとレセプター蛋白の結合能の解析:上記の手法でそれぞれの蛋白を作成し、インテグリンαv,β3やCD44とのビアコア3000を用いた結合アフィニティーの解析を行った。 (3)Agnm3コンジェニックマウス系の確立と繁殖:MRL/lprを背景として、C3H/lprとの戻し交配によりAgnm3領域のみをC3H/C3Hホモとした系統MRL/lpr-Agnm3^<C3H/C3H>の遺伝子背景を詳細に検索し、Agnm3領域以外が全てMRL/lpr由来となっていることを確認した。その後、それぞれの系に関し、繁殖を行い、実験に供される個体数を確保すべく繁殖続行中である。 (5)Agnm3コンジェニックマウス系におけるOPN発現の差異の解析と病態解析:上記(4)で確立したAgnm3コンジェニックマウス、即ち、MRL/lpr-Agnm3^<C3H/C3H>,MRL/lpr-Agnm3^<MRL/C3H>、およびMRL/lpr-Agnm3^<MRL/C3H>につき、一部を4〜5ヶ月例で屠殺して、病理学的手法による病態解析を行った。
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