代表的な女性ホルモンであるエストロゲンは卵巣だけではなく、男性生殖器官の精巣でも重要な機能を担っていると考えられている。アロマターゼ(Aromatase)はエストロゲン合成の最終段階を触媒する酵素である。この酵素をコードするゲノム遺伝子を破壊してエストロゲンを合成できないマウス(Ar^<-/->マウス)を作製した。本研究の目的はAr^<-/->マウスを用いてエストロゲンの精巣における生理作用を明らかにすることである。 野性型マウスを植物エストロゲンを含まない飼料で飼育しても精子形成には何らの影響はみられない。ところが、Ar^<-/->KOマウスを同じ飼料で飼育すると、5か月齢で18%のマウスで精子形成に異常がみられた。即ち、発症頻度は低いがエストロゲン欠乏が精子形成に異常をおこすことを確認した。ところが、エストロゲン受容体α(ERα)の対立遺伝子のうちの片方の遺伝子が機能をなくしているでArKOマウス(Ar^<-/->KO ERα^<+/->マウス)では43%のマウスに精子形成に異常が起きることが分かった。即ち、機能的なERα遺伝子量が半減すると精子形成が非常に障害をうけることが判明した。ERαの発現量をWestern Blot法で解析したところ、ERαの発現がその遺伝子量と相関して半減していることが判った。これらのことから、Ar^<-/->KOマウスで見られる精子形成の異常は、エストロゲン受容体αの発現量と関係があることが示唆 された。
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