エストロゲン合成遺伝子(Ar)欠損マウス(Ar^<-/->マウス)とエストロゲン受容体α遺伝子(ERα)欠損マウス(ERα^<-/->マウスを用いて精子形成機能を解析した。Ar^<-/->ERα^<+/+>マウスの精子形成機能を野生型マウス、Ar^<+/+>ERα^<+/+>マウス、及びAr^<-/->でかつERαの2対ある遺伝子の片方が欠損しているAr^<-/->ER^<+/->マウスのそれとを組織学的に比較した。その結果、Ar^<-/->ERα^<+/+>マウスはAr^<+/+>ERα^<+/+>と比較して5ヶ月齢では有意な精子形成の異常は認められなかった。一方、50%のAr^<-/->ER^<+/->マウスでは精子形成が大きく障害を受けていた。10ヶ月齢になるとAr^<-/->ERα^<+/+>マウスもAr^<-/->ER^<+/->マウスと同様に80%以上のマウスで精子形成に異常が見られた。こうした高齢のマウスでも餌にエストロゲンを補充しておくと精子形成の障害を完全に抑制できた。 エストロゲン作用の欠乏は精巣輸出管の形態に顕著に現れると報告されていたが、本モデル動物で精巣輸出管の形態を解析したが、精子形成の障害と輸出管の形態変化とには相関が見られなかった。これらの結果から、エストロゲン合成欠損は輸出管に影響するのではなく精巣本体に何らかの不都合な影響を及ぼしていると考えられる。 そこで、5ヶ月齢の、Ar^<+/+>ERα^<+/+>マウス、Ar^<-/->ERα^<+/+>マウスおよびAr^<-/->ER^<+/->マウスの精巣で発現している遺伝子の質的量的相異を検出するためにマイクロアレイ解析を行った。その解析を平成19年度の研究で引き続いて行う。
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