研究概要 |
1)形態を主体とした検索 神経症状を極度に呈し、死亡する直前(14-15週)のSandhoff病モデルマウス(SDマウス)の胸腺は、野生型マウス(WTマウス)と比較して、約1/5程度萎縮している。形態学的には胸腺の皮質部分に肥大したマクロファージ(Mφ)が確認され、CD4+CD8+細胞が減少し、CD4+T細胞が増加していた。また、肥大したMφのライソゾームは、GM2,GA2が蓄積していた。電子顕微鏡による観察では、Mφの細胞質内に貧食されたと思われるリンパ球の変性した核が多く見られた。SDマウスの胸腺は、Mφがリンパ球を貧食することにより萎縮していると示唆された。 2)DNAマイクロアレーによる胸腺発現遺伝子の網羅的解析 SDマウスの胸腺の分子メカニズムを網羅的に解析する為にDNAマイクロアレーを行った。末期のSDマウスの胸腺では、IL-4,IL-10,IL-13等のTh2関連サイトカインの産生やB細胞誘導性ケモカインCXCL-13等の遺伝子の高発現が認められた。Mφ内に代謝出来ない物質が蓄積すると自己免疫疾患を引き起こすなどの最近の知見から、SDマウスの胸腺でも、Mφ内にGM2,GA2が蓄積し、活性化することにより自己抗体産生に誘導していると示唆される。 3)リンパ球への自己抗体の沈着 CD4+CD8+細胞を含むT細胞の膜表面には多くのガングリオシドが発現していることが知られている。15週のSDマウスのT細胞には自己抗体が沈着していることを確認した。よって、ADCCによりT細胞はMφに貧食されていることが示唆される。 4)今後の研究 SDマウスの自己免疫疾患は、胸腺MφがT細胞を処理した結果、Mφに分解出来ないガングリオシドが蓄積し、活性化することにより発症していると考えられる。今後、in vitroの系でガングリオシドの蓄積とMφの活性化機構について詳細に調べる。
|