研究課題
昨年度の本研究でわれわれはPrimary Effusion Lymphoma(PEL)細胞株を免疫不全マウスの腹腔に移植して得られた液性リンパ腫と固形リンパ腫の二つの成分をEttan DIGEシステムを用いたプロテオミクスとDNAアレイを用いて比較し、液性リンパ腫と固形リンパ腫の間で発現に差のある分子として、約15種類の遺伝子・タンパクを同定した。PELは胸水や腹水などの体腔液に固形腫瘍を形成せず、培養細胞のように浮遊する形で増殖する、特殊なリンパ腫であり、ヒトヘルペスウイルス8(HHV-8または、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルスKSHV)の関与が知られている。18年度は昨年度に同定された固形リンパ腫で高発現する分子の中に、リンパ球の接着因子として重要な分子LFA-1が含まれていることに注目し、動物モデルにおける固形リンパ腫と液性リンパ腫のサンプルを用いて、接着因子の発現を検討した。その結果、固形リンパ腫では明らかにLFA-1の発現が亢進することがウエスタンブロットで確認された。同時に、やはりマイクロアレイとプロテオミクスで同定されたCoronin IAなどの細胞マトリックスや構造タンパクに関わる分子がLFA-1の発現とともに固形リンパ腫で有意に亢進していることを確認した。さらに、液性リンパ腫と固形リンパ腫でHHV-8がコードする遺伝子の発現を検索したところ、液性リンパ腫でvIL-6などのHHV-8の細胞溶解性感染関連タンパクの発現が亢進していた。これらの結果はウイルスの動態と接着因子の発現、細胞内マトリックス関連タンパクの発現との間に何らかの因果関係、相互作用があることを示唆する。
すべて 2006
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