研究課題
基盤研究(C)
Primary Effusion Lymphoma(PEL)は胸水や腹水などの体腔液に固形腫瘍を形成せず、培養細胞のように浮遊する形で増殖する、特殊なリンパ腫である。ヒトヘルペスウイルス8(HHV-8)の感染が見られ、HHV-8による日和見腫瘍と見られている。17年度の研究ではHHV-8感染PEL細胞株TY-1をSCIDマウスの腹腔内に投与し、1-2ヶ月後に液性リンパ腫と固形リンパ腫を得た。ここからタンパクとmRNAを抽出しEttan DIGEシステムを用いたプロテオミクスとDNAアレイを用い、液性リンパ腫と固形リンパ腫の間で差のある分子を検索した。プロテオミクスとDNAアレイではそれぞれ様々な分子が同定されたが、発現比較においてはプロテオミクスの結果とDNAアレイの結果はよく相関し、2方法で検出された分子もあった。18年度はこれらの中で、固形リンパ腫で高発現する分子の中にリンパ球の接着因子として重要な分子LFA-1が含まれていることに注目し、Coronin 1Aなどの細胞マトリックスや構造タンパクに関わる分子とともにこれら接着因子の発現が固形リンパ腫で有意に亢進していることを確認した。さらに、HHV-8がコードする遺伝子の発現を検索したところ、液性リンパ腫でvIL-6などのHHV-8の細胞溶解性感染関連タンパクの発現が亢進していた。これらの結果はウイルスの動態と接着因子の発現、細胞内マトリックス関連タンパクの発現との間に何らかの因果関係、相互作用があることを示唆する。B細胞やリンパ腫における接着因子の発現機構についてはよく知られておらず、今後、このモデルでウイルスの関与をさらに解明することで、B細胞リンパ腫の普遍的な発症機構に迫ることができる可能性がある。
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