研究概要 |
がん組織微小環境の生物像は多彩であり、がん細胞のみならず、その周囲を様々な種類の間質細胞が充填している。線維芽細胞は、最も多くがん間質内に存在する間質細胞であり、がん進展に影響を与えている可能性が報告されてきた。本研究は、GFPラベルした線維芽細胞株(KM104^<GFP>-1G)をがん間質に取り込ませ、その動員頻度を比較検討することにより、がん間質に親和性の高い線維芽細胞を同定し、線維芽細胞の動員機構を解明しようとするものである。また、がん間質に動員されたGFP陽性線維芽細胞の分離培養を繰り返すことにより、がん間質に高頻度に動員される亜集団を単離し、その生物学的形質を解析することも目的としている。現在までに、KM104^<GFP>-1G+ヒト膵がん細胞株の腹腔内投与を5回繰り返し、ヒト膵がん間質に高度に動員される線維芽細胞亜株(KM104^<GFP>-5G)を樹立した。KM104^<GFP>-5Gは、KM104^<GFP>-1Gと比較して、in vitroにおけるchemotaxis activityが有意に亢進していた。 cDNA microarrayを用いて、KM104^<GFP>-5G、KM104^<GFP>-1Gにおける遺伝子発現の差異を検討した結果、cytokeratin 8,carbonic anhydraseIXの遺伝子発現が、KM104^<GFP>-5Gにおいて亢進していた。外科的切除されたヒト膵臓がん組織において、cytokeratin 8,Carbonic anhydraseIX蛋白の発現は、がん組織内腺維芽細胞に認められたが、非がん部線維芽細胞においては、発現は認められなかった。現在、これらの蛋白発現が、線維芽細胞のがん組織内動員に関与しているか検討中である。
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