研究概要 |
マラリア感染において、末梢血の赤血球ライセートの好中球遊走活性の上昇が起こることがわかった。カラムクロマトにより、この遊走因子を精製しN末アミノ酸配列の解析し、ユビキチンファミリー蛋白(IP18)と同定した。このIP18の蛋白質レベルの発現とmRNAの発現の変遷をマラリア感染時の各臓器において経時的に調べた。IP18好中球遊走活性のエピトープを解析したところ、既知の好中球遊走因子であるfMLP(フォルミルメチオニルロイシルフェニルアラニン),TfNCF(トリコモナス)、DiNCF(犬糸状虫),GRO(ケモカイン)とは、交差しないことが判った。各種トランケートフォームのリコンビナントIP18の好中球遊走活性の測定の結果、好中球遊走活性の発現には78-87のアミノ酸配列が不可欠であることが明らかとなった。IP18は赤血球凝集活性を示し、この活性はC末端の143-160が欠損すると著しい低下が起こることが判った。また、マラリア媒介をするAnopheles唾液や中腸抽出液には、宿主の白血球に対するAnopheles唾液の好酸球遊走活性は、住血吸虫感染において産生される好酸球遊走性レクチンと同様にキチナーゼファミリー蛋白であることが判った。このキチナーゼに対する抗体は、マラリア流行地のソロモン諸島の住民の血清に、広範囲に存在していることが判ったが、抗体の有無はP. falciparumの感染の有無とは関係無かった。このように、白血球遊走性レクチンは、寄生虫感染の成立と関係があることが明らかになった。
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