研究概要 |
細胞間結合分子が免疫バリア機能を発揮するには、発現がどのような細胞によりどのくらい強く起こるのかが最も重要な鍵となる。申請者は、上皮細胞以外にも、腸管上皮間T細胞(IEL)が細胞間結合分子(occludinとE-cadherin)を発現し免疫バリアの重要な構成細胞となりうること、しかし腸管以外の他の免疫臓器である胸腺や脾臓などのT細胞では発現がないことを報告した(Biochem Biophys Res Commun,2005)。さらに、腸管寄生原虫Eimeria vermiformis(E.vermiformis)を用い、腸管感染症における細胞間結合分子の変動について調べた。その結果、E.vermiformis感染により、細胞間結合分子の発現はECでは顕著に低下したがIELでは維持されていた(論文投稿中)。これはIELが免疫バリアのみならず機械的バリアを構築する細胞であることを初めて証明した報告である。 申請者は、IELの質的、量的変化が上皮細胞の細胞間結合分子の発現ひいては免疫バリアのもつ多様性に関与していると考えている。論拠として、γδ型T細胞を欠損するCδ^<-/->マウスは元来IFN-γやTNF-αなどのTh1タイプを含む炎症性サイトカインを産生し腸炎を発症しやすいこと、その病態が小腸、大腸共に認められることを見出している(Inagaki-Ohara, et al., J.Immunol.,2004)。また周知のように、αβ型T細胞を欠損するTCRα^<-/->マウスはTh2タイプのサイトカインを高産生し、潰瘍性大腸炎のモデルマウスである。サイトカインが細胞間結合分子の発現の増減を制御することが報告されている。現在、これらのマウスの上皮細胞やIELにおける細胞間結合分子の発現を調べ、E.vermiformis感染におけるそれらの細胞の意義について細胞間結合分子の観点から研究を進めている。 またin vitroを中心とした研究により、このような炎症性サイトカインがtight junction分子の発現を低下させることが報告されている。申請者はサイトカインシグナルの負の制御因子である、SOCS1をリンパ球に高発現させたトランスジェニック(SOCS1Tg)マウスでは、IBDの自然発症、γδT細胞数の顕著な減少、さらにT細胞活性化を終息させるCTLA-4のタンパク発現の著しい低下が認められた(Gut,2006)。現在、サイトカインシグナルと結合分子シグナルとの相互作用について、感染モデルを用い調べている。
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