研究概要 |
申請者は腸管上皮間T細胞(IEL)の上皮間という他のT細胞とは異なる存在部位の特異性に着目し、これまで研究されてこなかったT細胞におけるジャンクション分子の存在およその意義について以下のことを明らかにした。その結果、IELは他のT細胞とは異なりoccludin (Tight Junction)とE-cadherin (Adherens Junction)を常時発現すること、さらにγδ型(TCRγδ) IELではTCRαβIELに比べ、これらのジャンクション分子の発現が高いことを見出した(Biochem.Biophys.Res.Commun.,2005)。次に、腸管寄生原虫Eiceria vermiformis (E.vermiformis)感染実験を行った結果、感染部位において炎症の増悪化により上皮細胞ではoccludinやE-cadherinなどのジャンクション分子の発現が低下するのに対し、IELはその発現を維持していた(Infect.Immun.,2006)。また、IELは宿主防御に必要なTh1タイプのサイトカインを産生していた。Th1タイプのサイトカインは、原虫感染防御に必要である一方、Tight Junction分子の発現を低下させることも知られている。そこで感染マウスから分離した上皮細胞をIELとTranswell内で共培養し、上皮層の電気抵抗値の測定を行った。その結果、IELと共培養した上皮層での電気抵抗値は上昇し、上皮層のバリア強度が増加した。これらの結果から、1)T細胞であるIELがジャンクション分子を発現すること、2)これまで不明であったE.vermifoumis感染局所でのエフェクター細胞の1つがIELであること、3)IELは自ら発現するジャンクション分子を用い感染による上皮バリアの崩壊を阻止し、その機能維持に働くことが示された。以上の研究成果は、IELが上皮バリアの構築に重要な細胞であることを示したはじめて報告である。
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