研究概要 |
マスト細胞は即時型アレルギーの病態形成や炎症・免疫反応に関与し、粘膜型マスト細胞は小腸の粘膜免疫と線虫感染防御機構において重要な役割を演じ、マスト細胞に発現する接着分子は重要な研究課題の一つである。我々の一連の研究でE-カドヘリン、インテグリンαEβ7は粘膜型マスト細胞の局在に深く関与していることが示唆された。しかし上皮系細胞と接していない腹腔マスト細胞(結合織型マスト細胞)においてもE-カドヘリンが発現し、E-カドヘリンの接着阻害抗体を作用させると脱穎粒が抑制されることからマスト細胞に発現するE-カドヘリンは接着能以外に未知の機能が存在することが予想される。本研究の目的は(1)マスト細胞における未知の接着分子を発見すること、(2)E-カドヘリンを含めた接着分子の機能を明らかにすることである。 培養粘膜型マスト細胞を用い種々の接着分子発現を解析した結果、接着分子Ep-CAM (Epithelial Cell Adhesion Molecule)とtight junctionの裏打ち蛋白であり、E-カドヘリンの細胞内結合蛋白α-カテニンやアクチンフィラメントと結合しカドヘリンを介する細胞間接着の構成要素であるZO-1とそれに結合するcculudinの発現を新たに認めた。次いでマスト細胞におけるE-カドヘリンを含めた上記接着分子の遺伝子ノックダウンマスト細胞の作製を試みた。方法は細胞正電荷リボソーム法により合成siRNAを培養粘膜型マスト細胞(BMMC)、マスト細胞株(P-815,IC-2)にトランスフェクションし、RNAiを誘導した。現時点での結果は目的遺伝子のノックダウンを確認中(分子レベル:リアルタイムPCR、蛋白レベル:FACS、ウエスタンブロット)である。今後、効率の高いトランスフェクション方法の検討を含め、上記接着分子の機能をin vivoで解析する予定である。
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