研究概要 |
優れた抗マラリア薬であるアルテミシニンは、SERCA(筋小胞体カルシウムポンプ)の特異的な阻害剤であるタプシガギンと同じく、セスキテルペンラクトン類であることに注目して、私たちは、Xenopusオーサイトを用いたアッセイで、PfATP6小胞体型カルシウムポンプがアルテミシニンによって高度に阻害されることを明らかにし、アルテミシニンの標的分子がPfATP6である可能性を示唆してきた(Nature 424:957-61,2003)。しかし、これは更に検証しなければならないいくつかの課題を含んでいる。そのひとつはATPアーゼ活性でしかポンプ阻害効果をみていないことである。アルテミシニンのPfATP6阻害効果をより詳しく調べるためには、カルシウム輸送能で調べる必要がある。マラリア原虫は大量培養できないので、この目的のために、heterogenousな発現を真核細胞系で行う必要がある。 pcDNA3.1+プラスミドに、C末端にc-mycタグをつけたPfATP6遺伝子全長(3684塩基)を入れたPfATP6組換え体を構築した。配列を確認したところタグの配列に2塩基のミューテーションがあることが分かった。これをCos7細胞にトランスフェクトしミクロソーム画分を調べたが、カルシウム輸送能が亢進しているというデータは得られなかった。 発現の確認に問題があると考えられるので、タグ配列のミューテーションの修正を試みているが、ATリッチ遺伝子であるためにPCRと制限酵素Dpn1による単純な修正法は使えないことがわかった。また、EGFP遺伝子の導入も試みている。これらにより、マラリア原虫小胞体型カルシウムポンプ遺伝子が進化的にかけ離れた真核細胞で発現されるとき、正しく小胞体膜に埋め込まれるかどうかを調べ、アルテミシニンの作用機序の一端を解明することをめざす。
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