本年度は、赤痢アメーバ(Eh)のゲラニルゲラニル転移酵素II型(EhGGT-II)およびRab escort protein (REP)について、他種生物との相同解析、保存領域の検討、ならびに系統解析を行なうとともに、組換えタンパクを発現、精製し、その生化学的性状等について調べた。 EhのGGT-IIのαサブユニット(GGT-IIα)、βサブユニット(GGT-IIβ)およびREPは、それぞれ317、315、480アミノ酸からなり、それぞれのタンパク質に特有のドメイン配列が認められた。他種生物との相同性は、GGT-IIαでは14〜34%、GGT-IIβでは42〜49%、REPでは18〜23%だった。近隣結合法による系統樹では、哺乳類であるヒトとラットはクレードを作るが、Ehは酵母と同様に他種生物とクレードを作らず、独自に進化したものと考えられた。SDS-PAGEを行なったところ、大腸菌に発現させたEhGGT-IIの組換えタンパク質は、40kDのGGT-IIαと36kDのGGT-IIβとの複合体として精製されたことが確認された。REPは58kDであった。イムノブロットでは、抗EhGGT-IIα血清とEhREP血清は、それぞれ、EhGGT-IIα、EhREPとは反応せず、抗原性の違いが認められた。組換えEhGGT-IIは、哺乳類の酵素と同様に、REP依存性のゲラニルゲラニル化の活性を示した。基質特異性を調べたところ、ラットGGT-IIはEhGGT-IIより高率にEhRab11Cをゲラニルゲラニル化した。以上のことから、EhのGGT-IIは、系統的にも、抗原性に関しても、哺乳類のGGT-IIと著しく異なっていることが明らかとなった。また、EhGGT-IIと哺乳類のGGT-IIと基質特異性に違いがあることが示唆された。
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