ファルネシルニリン酸合成酵素(FPPS)およびゲラニルゲラニルニリン酸合成酵素(GGPPS)に代表されるイソペンテニルニリン酸合成酵素(IPPS)は、テルペンの合成に必須の酵素である。今回、赤痢アメーバのIPPS遺伝子をゲノムデータベースで検索し、クローニングし、一次構造を系統解析および相同解析を行ってその特異性を明らかにした。 すなわち、まず、赤痢アメーバのゲノムデータベース(12×読まれている)を相同検索したところ、IPPSのドメインをもつタンパク質をコードする3つの遺伝子の存在を確認した。それらは、ほぼ同一の349、349、337アミノ酸配列をコードしており、他にはIPPSの遺伝子は認められなかった。次に、赤痢アメーバのcDNAをテンプレートとしてPCRを行ったところ349アミノ酸をコードする遺伝子がクローニングされた。 FPPSとGGPPSを系統解析したところ、大きく3つのクレイドに分かれた。それらは、(1)FPPS、(2)哺乳類、魚類、真菌等のGGPPS、(3)細菌のGGPPSである。赤痢アメーバとその近縁種であるEntamoeba disparのIPPSは、真核生物のものでありながら細菌のGGPPSのクレイドに含まれ、その中では離れた枝を形成した。このことから、赤痢アメーバのIPPSはGGPPSあり、系統的に特異な位置にあると推測される。一方、相同配列を行うと、他種のFPPSと相同なアミノ酸とGGPPSと相同なアミノ酸が点在する特異な一次構造を持っことが明らかになった。 以上のことから、赤痢アメーバは細菌のGGPPSから分岐した1種類のIPPSのみを持ち、複数の合成(縮合)反応を触媒しているのではないかと推察され、今後の検討課題である。
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