研究概要 |
腸管出血性大腸菌が産生する志賀様毒素には志賀様毒素1(Stx1)と志賀様毒素2(Stx2)が存在しており、Stx2の方がStx1よりもマウスに対する病原性が高いことが知られている。しかしながら、Stx1の方がStx2よりも受容体に対する親和性は高い。そこで我々はStx1とStx2の病原性と受容体に対する親和性との関係を明らかにするために、Bサブユニットの置換変異ホロ毒素を作製し、検討をおこなった。Stx2Bの特定領域をStx1Bのものに置換し、C末端にHisTagを付加したキメラStx2BHの作製を行った。Stx2BH(I)は1-8残基をStx1Bのものに置換した。同様に、Stx2BH(II),Stx2BH(III),Stx2BH(IV),Stx2BH(V)はそれぞれ9-16残基、17-31残基、36-45残基、48-70残基をStx1Bのものに置換した。受容体分子であるGb3との親和性について、Gb3-ELISA法によって確認した。その結果、IIIの領域とVの領域両方を置換したStk2BH(III V)はStx1BHとほぼ同じレベルの親和性を示した。そこで、このBサブユニットを持ったホロ毒素の毒素活性を明らかにするために、Stx2のAサブユニットとstx2B(III V)を同時に発現させた変異Stx2を作製した。これらのホロ毒素とStx1およびStx2のGb3に対する親和性をGb3-ELISAによって比較した。その結果、すでに報告されているようにStx1がこの中では最もGb3に対する親和性が高く、次にStx2A2B(III V)であった。また、Stx2はこの中では一番Gb3に対する親和性は低かった。そこでこれら結合性の異なるホロ毒素の病原性をマウスを用いた致死活性を基にして解析した。 その結果、Stx2が最も病原性が高く、LD50はおよそ3ng、それ以外のポロ毒素のLD50は少なくとも300ng以上であることが明らかになった。これらの結果から、志賀様毒素の病原性は受容体であるGb3への親和性と逆相関の関係があることが明らかになった。
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