米国の臨床分離バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)636株(E.faecium)を調べた結果、277株(43.6%)がバクテリオシン(Bac)生産株であった。このうちVRE200とVRE82からそれぞれBacプラスミドpTI1(12.5kb)とpDT1(6.2kb)を分離同定した。pTI1はE.faecium、E.hirae、E.duransに対して活性を示すBac32をコードし、pDT1はE.faecalis、E.faecium、E.hirae、E.durans、Listeria monocytogenesに対し強い活性を示すBac43をコードしていた。pTI1とpDT1の全塩基配列の決定と分子遺伝学的解析の結果、Bac32とBac43遺伝子は共に構造遺伝子bacAと免疫遺伝子bacBから成るオペロンを構成していた。Bac32のbacAはシグナルペブチドを持ち、分泌型Bac32は70アミノ酸であった。これと相同性を示す既知の蛋白は無く、新規の作用機序をもつBacであった。一方、Bac43のbacAはシグナルペプチドを持ち、分泌型Bac43は44アミノ酸であった。Bac43は、腸球菌(VRE)のSec依存的IIa型Bacと高い相同性を示した。 米国分離VRE636株のうち189株(29.7%)でBac32遺伝子を検出した。また、日本の臨床分離腸球菌E.faecium45株を調べたところ、22株(39.3%)でBac32遺伝子が検出された。健常人の糞便から分離されたE.faecium46株は1株(2.2%)のみにBac32遺伝子が検出された。米国分離VRE636株中21株がpDT1類似プラスミドを保持していた。これらの結果は、我々が見出した新規のBac32及びBac43はVREを含め臨床分離E.faecium株に広く存在し、陽球菌の定着性、病原性因子に関与していることを示唆している。
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