研究概要 |
申請者らは、世界に先駆けて病原放線菌で最も感染症の多いNocardiaの菌種であるNocardia forcinica IFM 10152株の全ゲノムを解析して2004年に報告した。本研究では、その情報やアレイ情報に基づいて、Nocardiaの菌種に特異的な遺伝子を探求した結果、N. forcinicaに特異的な遺伝子断片を見出した。この遺伝子は、ゲノム配列から検索するとN. forcinicaに特異的な蛋白の一部と考えられる(hypothetical protein nfa29510)の一部で、nfa29520に隣接した遺伝子であることが明らかになった。本遺伝子の解析結果から、N. forcinicaの菌種に特異的はPCR primerを作製することができ、その特異性が確認できた。マウスを用いて実験的なノカルジア症の血液中のN. farcinicaの検出にも、本PCR primerが有用であることが確認され、さらにRealTime PCRにも応用可能であることが明らかとなった。また、N. farcinicaのゲノム情報から、微生物にとって必須遺伝子であるgyrB遺伝子についても特異的な配列があることから、プライマーを作製して、60種の全ての菌種の遺伝子解析を完了することができた。その結果。gyrB遺伝子情報を用いるとNocardiaは同じ抗酸菌であるMycobacteriumやRhodococcusからは、それぞれ82%および76%の相同性値を基準に区別することが出来た。 細菌の分類においては、16SrDNAの配列情報が最も良く用いられており、Nocardiaにおいても基準法となっている。16SrDNAの場合に60種のNocardiaの菌種間の相違の幅は94.5-100.0%と極めて狭い範囲に多くの菌種が分布している。しかし、今回解析したgyrBでは、菌種の相違幅は,82.4-99.9%と格段に増加しており、菌種の解析力が極めて高くなり、その有用性が確認でき、新しい分類体系として提案した。GyrB遺伝子は、その長さは約1,200塩基であるが、その中で変異領域が約500-600塩基に集中していることから、1回のPCRで種の確定が可能な長さにおいて、その検討を進めている。
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