ヒト病原性酵母Cryptococcus neoformansの細胞周期制御機構はモデル酵母Saccharomyces cerevisiaeのそれとは異なることが推測されている。今回、まずC.neoformansの標準液体培養条件下における細胞周期の時間的側面を明らかにすることを目的として、本培養条件下における母細胞、娘細胞の倍化時間を推定した結果、娘細胞は母細胞の大きさに成長するのに倍化時間の半分を費やしていると考えられた。これらのデータは、今後C.neoformansの細胞周期の研究を進めていく上での基礎データをなすと考えられる。また、我々は真核細胞の細胞周期制御機構の中心分子と考えられている、サイクリン依存性キナーゼCdk-1(Cdc28)遺伝子を、本菌より分子クローニングし、その機能解析を進めて来たが、更にCdk-1と相互作用して、細胞周期を制御する分子候補の遺伝子クローニングを行い、解析しつつある。特に、Cdk-1を調節する因子である、サイクリン類の数分子を新たに遺伝子クローニングし、遺伝子バンクに登録して、更に機能解析を進めている。一方、細胞周期制御の分子機構解析を行う有力な手法として用いるべく、C.neoformansのプロテオーム解析を進めている。C.neoformans細胞破砕抽出液を用いて、二次元電気泳動、タンパク質スポットの解析、アミノ酸配列解析、質量分析、データベース解析などプロテオーム解析を進めつつある。また、細胞周期各期の間の酵母プロテオームの変動を探索する目的で、酵母破砕抽出液のタンパク質発現デイファレンシャル解析法(DIGE)を行い、発現量の増減の顕著なスポットの検索、同定、解析を進めている。
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