研究概要 |
腸管出血性大腸菌(EHEC)と腸管病原性大腸菌(EPEC)はAE病変呼ばれる病変をType III輸送装置によって分泌される病原因子により形成する。我々は、clpXP破壊株においてLEE領域にコードされているType III輸送装置とそれにより輸送される病原因子の発現が抑制される事を確認した。そこで、その原因を解析した結果、ClpXPプロテアーゼの基質である定常期特異的な転写因子RpoSを経由する経路としない経路でLEE領域の発現をコントロールしていることを発見し報告した。そこで、この制御機構をさらに解析する目的で研究を進めた。LEE領域の発現は、この領域にコードされているGrlA (global Regulator of LEE activator)やGrlR (Grl repressor)によってコントロールされることが明らかになっている。伊豫田らは、GrlRの量をClpXPが調節することによりLEE領域の発現が制御されていることを明らかにした(J.Bacteriol.2005.187:4086-94)。しかしながら、これら蛋白質とAAAプロテアーゼによるLEE領域発現制御機構についてはまだ未解明な部分が多い。そこで、非病原性大腸菌を用いてLEE2,3,5プロモータ活性をβガラクトシダーゼ活性を指標に解析することが可能な系を作成し解析を行った。その結果、GrlAによるler (LEE-encoded regulator)遺伝子の転写活性化は終止コドンから131塩基対までの下流領域を認識して起こることを発見した。この結果は、ler遺伝子の発現制御には遺伝子の上流領域だけではなく下流領域も必要であることを示している。このような制御機構はこれまで報告がなく、非常に興味深い発見であり現在投稿準備を進めている。また並行して、この系を利用しながらGrlA, GrlRとAAAプロテアーゼの相互作用について詳細な解析を行っている。
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