研究概要 |
細菌リボ多糖(LPS)刺激や貧食反応によって,マクロファージ中でリン酸化されるタンパク質として,申請者が同定したp65/L-plastinは,calcium(Ca), calmodulin, β-actin結合部位を有する多機能タンパク質で,リン酸化と細胞内Caによって,細胞骨格(p65-scaffold)の構築に関与している。TLR4の機能欠損のためLPSに不応答なマウスでは,p65がリン酸化されず,p65-scaffoldの構築やその後のintegrinを介した細胞接着の亢進がおこらず,易感染性になると考えられる。最近,p65/L-plastinのノックアウトマウスでは,細胞接着依存的な活性酸素の産生がおこらず,細菌に対し易感染性であることが明らかにされ(Chen H, Immunity 2003),我々の仮説を支持している。本研究は,これまでの成果を基礎とし,p65-scaffoldを中心に形成されるタンパク質集合体について解析する。p65と直接・間接的に分子集合することが示唆されているタンパク質との関連について解析し,p65-scaffoldを足場とすることが想定されるintegrinやNADPH oxidase分子群との関連を明らかにする。菌体認識-p65-scaffoldの構築-細胞エフェクター機能を軸とする感染防御機構ユニットの解明を目指す。LPS刺激によって活性化され,p65/L-plastinをリン酸化するキナーゼについて性状を明らかにした。Plastinタンパク質ファミリー中のp65/L-plastinを特異的に認識し,T-plastinは認識しないモノクローナル抗体を樹立した。これによって,組織中でのp65/L-plastinの検出が可能になった。これらを用いて,菌体刺激や生菌感染によって誘導される細胞内p65/L-plastin局在変化(p65/L-plastin-scaffold構築),およびそれを中心とするタンパク複合体について解析した。得られた知見は論文発表ないし投稿中で,今後さらに解析を進めて,白血球細胞骨格のダイナミクスに基づく感染防御機構について明らかにしたいと考えている。
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