研究概要 |
各種の細菌が産生する細菌性プロテアーゼによる宿主細胞のアポトーシスの誘導において、A群レンサ球菌が産生するstreptococcal pyrogenic exotoxin B(SpeB)やセラチア菌が産生するserratial 56kDa protease、緑膿菌が産生するpseudomonal elastaseがmonocyte系のU937細胞にcaspase-3の活性化を介して、アポトーシスを誘導した。特に、serratial 56kDa proteaseはα2マクログロブリン(α2M)と複合体を形成し、宿主細胞のα2Mレセプターを通じてendocytosisにより細胞内に取り込まれ、細胞内の抗アポトーシス蛋白であるc-IAP1の分解が関与していることを明らかにした。 また、大腸菌による組換えSpeB蛋白、およびBacullo-virusを用いた組換えMMP(matrix metalloproteinase)を作製、SpeBがproMMP-9およびproMMP-2を限定分解することにより活性体にすることを見いだした。この活性化は、cysteine protease inhibitorを加えた場合や、不活性体SpeB(活性中心のCys→Ser)では認められないことを確認している。SpeBにより活性化したMMPは宿主細胞表面のアポトーシス誘導因子であるFas ligand(Fas L)やTNF-αのprosessingを引き起こし、細胞外に放出することを証明した。すなわち、細菌性プロテアーゼによるアポトーシス誘導機序として、(1)α2Mを介した細胞内の抗アポトーシス蛋白であるc-IAP1の分解によるもの(2)MMPの活性化を介してFasLやTNF-αのprosessingによるアポトーシスの誘導、の2つのメカニズムが提唱できる。 さらに、上記細菌性プロテアーゼによるアポトーシス誘導および病原性発現の関与について、各種の阻害剤Zicov inhibitor, E-64,MMP阻害剤(SI-27,BE16627B)を用いて、A群レンサ球菌感染モデルにおいて病態改善が可能かどうかの治療実験を行なった。SpeBの阻害剤E-54やMMP阻害剤SI-27の投与によって生存率の改善傾向を示した。今後、感染症や敗血症の治療の可能性が示唆される。
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