本研究は、Salmonella pathogenicity island 2 (SPI-2)に依存したサルモネラ小胞の成熟に必要なエフェクターをプロテオミクステクノロジーを駆使して網羅的に同定することを試みた。 (1)サルモネラ野生株を用いて、SPI-2発現誘導条件下で培養した上清中のたん白質を濃縮・精製し、アガロースニ次元電気泳動法で分離し、検出された17スポットのたん白質を同定したところ、16個は鞭毛のFliC、残りは外膜たん白質であるPagCであった。SPI-2を介してFliCが分泌されることはすでに報告があるが、分子量の異なるFliCが検出されることについては、今後の検討事項となった。 (2)野生株およびSPI-2発現調節因子であるSsrBの欠失変異株をSPI-2発現誘導条件下で培養した全菌体たん白質を用いてSsrBに誘導されるたん白質の検出を試みた。各菌体試料のたん白質をアガロース二次元電気泳動法で分離した。溶解性の異なる4つのフラクションにおいて、野生株よりもSsrB欠失変異株で発現量が低下した107個のスポットについて、たん白質の同定を行った。これらのたん白質については、現在、エフェクターとしての可能性について解析している。 (3)SPI-2エフェクター間における相互作用について、SifA、SseF、SseG、SifBおよびSseJについて検討した。overlay assayでは、各エフェクターをMBPおよびFLAG融合たん白質として精製したものを使用した。その結果、SifA-SifB、SiB-SseJおよびSifB-SseG間において相互作用することを明らかにした。さらに、SifBおよびSseJは、ホモダイマー(あるいはホモポリマー)を形成することが示唆された。
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