研究課題
基盤研究(C)
クオラムセンシング機構(QS)とは細菌がオートインデューサー(AI)と呼ばれる物質を介して自己に情報伝達するシステムである。Helioobacter pyloriはLuxSによってAI-2を産生するが、QSの役割については知見が不十分なままである。本菌の感染定着における役割について明らかにすることを目的としてluxS変異株を作成し、スナネズミ感染実験モデルで変異株と野生株を比較した結果、感染性が低下していることが示された。持続感染の成立に必須と考えられている性状の中から菌の運動性、上皮細胞への付着性、酸耐性、マクロファージ内での生残等を調べた結果では、野生株と比べて変異株の運動性が低下していることが示された。さらに運動性には低濃度のグルコース添加で、野生株は運動性を増すのに対し、変異株は抑制される結果が示された。また、病原因子の中からVacA産生、上皮細胞に対するIL-8産生誘導能、細胞変性効果について解析し、差は認められなかった。DNAマイクロアレイ法によりmRNA発現の網羅的解析結果では、対数増殖期にある変異株の遺伝子は野生株と比較して発現が0.6倍以下に低下していた遺伝子が12種あり、逆に1.5倍以上に発現の亢進が認められた遺伝子が58種類あった。しかし、いずれの遺伝子においても3倍以上の発現の差は認めていなかった。鞭毛関連遺伝子について、定量的リアルタイムPCR法で遺伝子の発現を比較したところ、flaA, flaB遺伝子が対数増殖期と比べて定常期に低下している結果を得た。定常期菌体の2D-SDS解析によるスポットの定量比較の結果、野生株に対する変異株の比率はFlaAは1.5倍以下でFlaBのみ2.4倍増加していた。この結果からluxS変異は鞭毛構成蛋白産生には大きな影響を与えず、運動に必要なエネルギーの低下といった別の理由が関与すると考えられた。
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