研究概要 |
細胞内寄生菌であるサルモネラはマウスに感染するとまず腸管よりマクロファージ内に侵入・増殖を行い、その後ヒトのチフス症に類似した全身感染を引き起こす。マクロファージの抗菌機構を阻害するサルモネラ側の機構についてはよく解析されているが、マクロファージ(貪食細胞)もしくは非貪食細胞のサルモネラに対する抗菌作用、および細胞内のサルモネラが増殖後にその細胞より脱出する機構についてはあまり明らかにされていない。 本研究では我々はこれまで破骨細胞とマクロファージとの分化に働くとされていたc-Fosが抗サルモネラ機構に関与すること(Maruyama et al.,2007)、また骨髄中に存在する非貪食細胞の骨芽細胞がサルモネラ感染時にマクロファージのような挙動を示すこと(Maruyama et al.,2006)を明らかにした。一方サルモネラに感染したマクロファージのうち、一部の細胞集団は細胞が膨張しながら不可逆的に細胞死に向かう(近年"オンコシス"と呼ばれている)現象に注目した。このオンコシスを起こしたマクロファージでは他の感染細胞のようにアポトーシスに伴うDNA断裂等は検出されず、また細胞内のF-アクチンは脱重合を起こしているため細胞膜の強度は大幅に低下していると考えられる。この細胞中でサルモネラは鞭毛を用いて激しく運動し、最終的にその細胞膜を突き破るようにして脱出することをin vitro実験系で明らかにした。また鞭毛を発現する野生型のサルモネラは鞭毛をもたない変異株に比べ、宿主に対する毒性は変わらないものの、より早く宿主個体より脱出することを確認した(manuscript in preparation)。
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