高度多剤耐性をもつ緑膿菌は多くの抗生剤が効かないので臨床上大きな問題となっており、新たな治療法の開発が切望されている。本菌の多剤耐性には多剤排出ポンプが寄与するが、緑膿菌ゲノムには多種類のポンプ遺伝子が存在する。しかし構成的に発現し、主要な役割を果たすのがMexAB-OprMである。このポンプは三サブユニットからなり、MexBは内服でトランスポーターとして、OprMは外膜で薬剤のチャネルとして、MexAはペリプラズムでこれらタンパクを連結するリンカーとして機能する。 (1)OprMの機能構造相関を明らかにするため、そのオリゴマー構造、さらにそのホモログであるOprJとOprNのオリゴマー構造を調べた。その結果、OprMとOprNは三量体を形成するが、驚いたことにOprJは四量体であることが分かった。このようなオリゴマー構造の多様性は排出機能に密接に関連すると考えられるが、その分子的意義の解明はこれからの課題である。 (2)468アミノ酸からなるOprMには、細胞外に出ている小さなループが二つあり、それらはP100〜P109(E1)及びR311〜G320(E2)である。驚いたことにポンプが正常に機能するにはEIとE2が必須である事が分かった。さらにこれらループはポンプの基質認識にも関与することが示された。 (3)以上の結果から、ループの働きを抑制すれば、ポンプ機能の阻害につながると考えられる。そこでループの働きを阻害する物質としてモノクローナル抗体(mAb)を考えた。ループに特異的なmAbがループに結合することで、ループの働きを抑制する可能性である。 そこでまずE2ループと同じ配列も持つペプチドを合成し、それをマウスに免疫し、ハイブリドーマを作成した。その培養上清にペプチド結合活性があるかを調べた結果、結合活性をもつmAbを産生する細胞の存在が確認でき、その数は17クローンであった。
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