研究概要 |
Salmonella enterica serovar Typhimuriumの染色体上に存在するSalmonella Pathogenicity Island 2の領域内に同定した新規の病原性遺伝子,spiCはマクロファージ(Mφ)の殺菌能に対する抵抗性やマウスに対する全身感染の成立に関与していること,さらに,SpiCの機能を明らかにする目的でサルモネラ感染によりMφ内で変化する宿主因子の網羅的な解析をcDNAアレイ等の方法により行った結果,SpiCがシクロオキシゲナーゼ2(COX-2),インターロイキン-10(IL-10),そしてサイトカイン抑制因子3(Suppressor of cytokine signaling 3:SOCS-3)の各遺伝子発現の増強に関与していることを明らかにした.本研究において,これらのファクターの発現の意義およびSpiCによる発現増強のメカニズムを解明するため,平成17年度の研究実施計画に基づいて研究を行った結果,以下の新たな知見を得た.1.サルモネラ感染MφのSpiC依存的なCOX-2およびSOCS-3の発現は,MAPキナーゼおよびNFκ-Bシグナル伝達経路が関与していた.2.IL-10の発現は,COX-2の発現増強により産生されるプロスタグランジンE_2(PGE_2)やPGI_2を介したプロテインキナーゼA(PKA)の活性化が関与していた.3.そのPKAの活性化は,活性酸素の産生を阻害することにより,サルモネラのMφ内増殖に重要な役割をしていた.4.SOCS-3の発現は,STAT1およびSTAT3のリン酸化を阻害することにより,IL-6およびIFN-γ刺激による活性を抑制した.5.透過型電子顕微鏡観察の結果,SpiCは鞭毛の形成に関与していた.6.SpiCは鞭毛繊維の構成タンパクであるFliCの輸送に関与していた.そして,FliCは上記の遺伝子発現に重要な役割を果たしていた.以上の結果から,SpiCは鞭毛形成に関与することにより種々のファクターの発現に関与し,さらにこれらのファクターの発現はサルモネラの病原性発現に重要な役割を果たしていることが明らかとなった.
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