Salmonella enterica serovar Typhimuriumの染色体上に存在するSalmonella Pathogenicity Island 2の領域内に同定した新規の病原性遺伝子、spiCはマクロファージ(Mφ)の殺菌能に対する抵抗性やマウスに対する全身感染の成立に関与していること、さらに、Spicの機能を明らかにする目的でサルモネラ感染によりMφ内で変化する宿主因子の網羅的な解析をcDNAアレイ等の方法により行った結果、SpiCがシクロオキシゲナーゼ2、インターロイキン10、そしてサイトカイン抑制因子3(Suppressor of cytokine signaling 3:SOCS-3)の各遺伝子発現の増強に関与していることを明らかにした。本研究において、これらのファクターの発現の意義およびSpiCによる発現増強のメカニズムを解明するため、平成18年度の研究実施計画に基づいて研究を行った結果、以下の新たな知見を得た。1.プロテオーム解析によるSpiCの機能解析。野生株およびspiC遺伝子欠損変異株の培養上清中に分泌されるタンパク質の解析を2次元電気泳動法で行った結果、spiC欠損変異株において著しく減少するスポットが確認された。そのスポットからタンパク質を抽出してMALDI-TOF MSによる解析を行った結果、鞭毛繊維の構成蛋白であるFliCと同定することができた。2.SpiCのFliCへの関与を詳しく調べるために、FliCに対するペプチド抗体を作製し、菌体あるいは培養上清中から蛋白を抽出してウエスタンブロット解析を行った結果、両画分においてspiC欠損変異株でFliCの減少が見られた。この結果から、SpiCはFliCの発現に関与していることがわかった。3.FliC欠損変異株を作製して、サルモネラ感染Mφの上記ファクターの発現を調べた結果、その減少が見られた。以上の結果から、SpiCは鞭毛形成に関与するFliCの発現に関与し、これによりMφにおける上記ファクターの発現に影響を与え、さらにこれらのファクターの発現はサルモネラの病原性発現に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。
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