研究概要 |
Salmonella enterica serovar Typhimuriumの染色体上に存在するSalmonella Pathogenicity Island2の領域内に同定した新規の病原性遺伝子,spiCはマクロファージ(Mφ)の殺菌能に対する抵抗性やマウスに対する全身感染の成立に関与しているが,その機能は明らかでない.そこで,SpiCの機能を明らかにする目的でサルモネラ感染によりMφ内で変化する宿主因子の網羅的な解析をcDNAアレイ等の方法により行った結果,SpiCがサイトカイン抑制因子3(Suppressor of cytokine signaling3:SOCS-3)などの遺伝子発現の増強に関与し,さらに培養上清を用いたプロテオーム解析の結果,SpiCの鞭毛蛋白発現への関与が明らかとなった.そこで,鞭毛形成およびサルモネラ感染MφのSOCS-3発現におけるSpiC関与のメカニズムを平成19年度の研究実施計画に基づいて研究を行った結果,以下の新たな知見を得た.1.SpiCのfliC遺伝子発現への関与を定量RT-PCR,およびレポーターアッセイにより調べた結果,SpiCは転写レベルでfliCの発現に関与していた.2.fliC同様,クラス3に属するfliDやmotA遺伝子の発現を定量RT-PCRにより調べた結果,spiC変異株でその低下が見られた.3.鞭毛遺伝子の発現を正に調節しているマスター・レギュレーターであるflhD/flhC遺伝子への関与を定量RT-PCRおよびレポーターアッセイにより調べた結果,その影響は見られなかった.この結果から,SpiCはクラス3の発現に直接関与しているFliAへの関与が示唆された.4.fliC変異株を感染させたMφにおいて,SOCS-3発現の低下が見られたことから,SpiC依存的なSOCS-3発現にFliCの関与が示された.そして,その発現はp38およびERKシグナル伝達経路の活性化が関与していた.5.精製FliCをMφの培養中に添加,さらにfliC遺伝子をクローニングしたpcDNA3.1ベクターをMφにトランスフェクションした結果,SOCS-3発現の増加が見られた.以上の結果から,SpiCはfliCを含む鞭毛遺伝子の発現に関与し,FliCがSpiC依存的なSOCS-3発現に重要な役割をしていることが示された.
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