研究概要 |
Salmonella enterica serovar Typhimuriumの染色体上に存在するSalmonella Pathogenicity Island 2の領域内に同定した新規病原性因子,SpiCはマクロファージ(Mφ)の殺菌能に対する抵抗性やマウスに対する全身感染の成立に関与していること,さらに,サルモネラ感染によりMφ内で変化する宿主因子の網羅的な解析をcDNAアレイ等の方法により行った結果,SpiCがサイトカイン抑制因子3(SOCS-3)などの遺伝子発現の増強に関与していることをこれまで明らかにしてきた.本研究の目的は,これらのファクターの発現の意義およびSpiCによる発現増強のメカニズムを解明することであり,各年度の研究実施計画に基づいて研究を行った結果,以下の新たな知見を得ることができた.1.SOCS-3の発現は,STAT1およびSTAT3のリン酸化を阻害することにより,IL-6およびIFN_κ-B刺激による活性を抑制した.2.SpiC依存的なSOCS-3の発現は,MAPキナーゼおよびNFκ-Bシグナル伝達経路が関与していた.3.培養上清を用いたプロテオーム解析により,SpiCは鞭毛繊維の構成蛋白であるフラジェリン(FliC)の発現に関与していた.4.SpiCは転写レベルでfliC遺伝子の発現に関与していた.5.電子顕微鏡観察を行った結果,spiC欠損変異株では極度に鞭毛の減少が見られた.6.fliC遺伝子欠損変異株を作製して,サルモネラ感染MφのSOCS-3の発現を調べた結果,その減少が見られた.7.精製FliCをMφの培養液中に添加,さらにfliC遺伝子をクローニングしたpcDNA3.1ベクターをMφにトランスフェクションした結果,SOCS-3発現の増加が見られた.以上の結果から,SpiCはフラジェリンの発現に関与することにより,MφからのSOCS-3などの発現に関与し,さらにこれらのファクターの発現はサルモネラの病原性に重要な役割をしていることが明らかとなった.
|