アドリアマイシンは、抗癌剤としてよく使用される薬剤であり、各種細胞に細胞傷害性を示し、細胞死を導く。他方、エンドトキシンも炎症性メディエーターやラジカルを産生し、細胞傷害を導く。今回、エンドトキシンのアドリアマイシン誘発細胞傷害作用に及ぼす作用を検討した。RAW 264.7細胞は、大腸菌由来LPS(100ng/ml)の存在下でアドリアマイシンの各濃度と共に培養した。生残率は、MTT活性で測定した。アポトーシス同定のために、DNA断片化、アネキシン結合能、ニックエンド染色が行われた。タンパクやRNA発現は、免疫プロット法やRT-PCR法で検出された。DNA傷害検出には、コメット法が用いられた。結果は、(1)アドリアマイシン5μM以上で、細胞傷害性を示すMTT活性の低下が認められた。しかしながら、LPSの前処置により、MTT活性の低下が抑制された。LPSのこの抑制効果は、アドリアマイシン処理の1時間後でも、抑制可能であった。(2)アドリアマイシン処理細胞の細胞死は、DNA断片化、アネキシン結合、ニックエンド染色が陽性であったことから、アポトーシスであることが明らかになった。LPSはこのアポトーシスを抑制した。(3)LPS以外でも、CpG DNAもこのアポトーシスを抑制したが、TNF-alphaやIFN-gammaでは抑制できなかった。(4)アドリアマイシン処理RAW 264.7のDNA傷害をエンドトキシンは抑制しなかった。(5)アドリアマイシン誘発アポトーシスは、p53抑制剤により抑制された。また、LPSは、アドリアマイシンによるp53の活性化、核内移行を抑制した。エンドトキシンがアドリアマイシン誘発アポトーシスを抑制した。そのメカニズムとして、アドリアマイシンはRAW 264.7細胞にDNA傷害を誘導し、このDNA傷害によりp53の活性化、核内移行が起こり、アポトーシスを導く。エンドトキシンは、このp53の活性化を抑制することによりアポトーシスを抑制すると考えられた。
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