研究課題
本研究では、微小管ホモログFtsZを標的分子とした新規抗菌物質を海洋性菌株由来抽出物から探索することを目的として、以下の研究を実施した。FtsZタンパクは、真核生物のチューブリンと同様にGTPase活性を有し、GTP依存的に重合-脱重合反応を起こすことが知られている。したがって、これらの性質に着目し、大腸菌内で発現させたリコンビナントFtsZタンパクを用いてFtsZの生化学的解析法を検討した。まずFtsZ-GTPase活性の測定法として、遊離リン酸を定量するマラカイトグリーンアッセイを行なうことで簡便かつ効率的に評価出来ることを明らかとした。また、FtsZ重合に関しては、当初計画していた濁度によるFtsZタンパクの検出法は、大量のタンパクが必要であり、多数の検体を扱うスクリーニングの系への導入は困難であると判断し、代替法として、蛍光分光光度計を用いた、Light-scattering assayによるFtsZの重合-脱重合の評価法を確立した。抗結核・MRSA薬スクリーニングのために、尾島らが合成した約100種類のパクリタキセル類縁化合物の中から、抗結核菌作用をもつ抗結核薬候補分子として、C-seco-taxaneを選び、結核菌FtsZタンパク質とこれらの候補物質との相互作用を、Light-scattering assayを用いて検討した。FtsZはGTP存在下で重合した後、脱重合して基のレベルに復帰するが、C-seco-taxaneが共存するとこの脱重合が抑えられることが分かった。今回確立した2つの方法を用いて、FtsZのGTPase活性阻害およびFtsZ重合抑制を指標とした新規抗菌薬スクリーニング法を開発し、海洋性菌株由来抽出物(海洋サンプル)を用いて探索をおこなった。これまでに抽出サンプル7500検体についてスクリーニングを実施した結果、約20検体において有意な活性阻害が認められた。その中で最も抑制効果がみられた1検体に関しては、HPLC精製等の分離精製を行ない構造を決定した。さらに、この候補物質は臨床上重要な病原微生物として位置づけられる多剤耐性緑膿菌、MRSA、およびBCG、非結核性抗酸菌の生育を阻害することが確認された。
すべて 2006 2005
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