研究概要 |
最近我々は、7種類のウイルス遺伝子RNA発現用ベクターと転写・複製に必要なPB2,PB1,P3,NP蛋白を含む9種類のウイルス蛋白の発現プラスミドを293T細胞にcotransfectionすることにより感染性C型ウイルスを作製する手法(reverse genetics)を確立した(J.Viro1.投稿中)。本法でNS1とNS2に共通なN末端領域にあるLeu20を終止コドンに置換し、premature terminationでNS1,NS2両蛋白の発現が著しく抑制された変異ウイルスの作製を試みたが感染性粒子は得られなかった。従ってNS1またはNS2蛋白は感染性粒子の作製に重要な役割を演じていると推測された。 NS1の共発現によりM遺伝子mRNAのsplicingが30%増加した成績からNS1がsplicing促進能をもつと推測された。そこでNS1に固有なC側領域(63-246番目のアミノ酸)に機能ドメインがあるかを検討するために、同領域の欠失変異ウイルスを作製し、その感染細胞でM遺伝子mRNAのsplicing効率を検討した。NS1固有のC側領域を完全に欠くとrecombinant virusが回収できない恐れがあったので、初めにNS1の91番目のPheを終止コドンに置換することにより、intactなNS2はコードするが、NS1はC末端領域の約70%を欠失するという変異NS遺伝子(F91stop)をもつウイルスを作製した。この変異ウイルスをHMV-II細胞に感染させた場合、蛋白レベルでM1(M遺伝子spliced mRNA由来)/CM2(unspliced mRNA由来)比は、親株ウイルス感染細胞と比べ20%低下した。従ってNS1に固有なC末端領域に機能ドメインがある可能性は高い。今後はNS1のC末端から様々な領域の欠失変異をもつウイルスを作製し、機能ドメインを同定したい。
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