研究概要 |
核内へウイルスゲノムを送り込むSV40を例として用い、核内への効率的な遺伝子導入に必要なメカニズムの解析を行っている。SV40の核内移行はそのカプシドの脱殻と連動して進行すると考えられるため、本研究は脱殻過程の阻害変異体の作成と解析を行うことを目的としている。 ウイルスカプシド間の結合をつかさどると考えられるアミノ酸残基の置換を行い、脱殻過程が阻害される変異体の作成を行っている。ウイルスカプシドの外殻を形成する主要カプシドタンパク質Vp1そして粒子内側に存在するVp2、Vp3タンパク質との相互作用部位に対して、ジスルフィド結合の導入あるいはイオン性の結合強化によってカプシドタンパク質間結合の強化を目的とした25種類の変異を作成しこれらの解析を進めている。 またそれと同時に、in vitroのカプシドタンパク質同士の結合解析を進める過程で、Vp2、Vp3自身がin vitroでのVp1粒子形成能力を促進することを偶然発見し、カプシドタンパク質間結合動態の詳細な解析と共にこの成果を発表した(J.Biol.Chem.2006,Vol.281,10164-10173)。 主要カプシドタンパク質であるVp1同士の相互作用の一部であるVp1Cys104-Cys104のジスルフィド結合を解析するにあたって、Vp1の残りの6つあるCysの変異をあわせて解析したところ、Cys49、Cys87,Cys207のそれぞれの変異では、Vp1同士の結合よりもVp1の細胞質内でのフォールディングに必須であることが明らかになった(J.Virol.2005,Vol.79,3859-3864)。この研究成果は還元状態が一般的である細胞質内でS-S結合が形成されることを示唆し、真核生物におけるタンパク質のフォールディング機序に新たな知見を与えるものである。
|