研究課題/領域番号 |
17590419
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
上野 貴将 熊本大学, エイズ学研究センター, 講師 (10322314)
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研究分担者 |
滝口 雅文 熊本大学, エイズ学研究センター, 教授 (00183450)
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キーワード | MHCクラスI / 細胞傷害性T細胞 / T細胞レセプター / HIV / 抗原提示 / 抗原 / 抗体 / ファージディスプレイ |
研究概要 |
本研究では、HLA抗原提示系がウイルス疾患制御に積極的に関わる役割と、そのシステムにウイルス因子が及ぼす影響の解明を目指している。まず、ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1)に対するHLA-B35拘束性のヒト細胞傷害性T細胞(CTL)応答を解析した。HLA-B35はエイズ病態の早期進行と相関することが知られている。40人以上のHIV感染者のウイルスRNAのシークエンス解析から、HIV-1はNefの75から85番のアミノ酸で構成されるRY11(RPQVPLRPMTY)というHLA-B35拘束性エピトープ領域で、Arg75->Thrという変異を獲得することがわかった。CTL応答を解析したところ、この変異は既存のCTL応答から逃避する変異であることが分かった。変異体に対する新たな免疫応答が起きないなら、この変異型HIVは真の意味でCTLエスケープを達成したことになる。しかしながら、変異型に対するCTL応答を調べたところ、変異型エピトープ(TY11:TPQVPLRPMTY)に特異的なCTLサブセットが認められ、それらは野生型(RY11)に特異的なCTLとは異なるT細胞レパートリーを形成していた。さらに変異型(TY11)に特異的なCTLの機能を解析したところ、このCTLサブセットは抗原刺激に応じてサイトカイン産生はするが、増殖応答を示さなかった。このことは、HLA分子による抗原提示が直接的にCTLの抗ウイルス機能の低下に関与する可能性を示唆する。そこでこうしたCTLの機能低下の原因を明らかにする一つのアプローチとして、HLA-B35によるRY11とTY11ペプチドの提示の量的、経時的解析を可能にするため、それぞれのペプチド・HLA複合体に特異的なファージ抗体のスクリーニングを行なっている。
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