1.全国1425頭の飼育ブタを調査し、ブタでのE型肝炎ウイルス(HEV)感染が全国的に蔓延していることを明らかにするとともに、55頭のブタからHEV株を分離し、日本人E型肝炎患者由来株と近縁であることを示した。また、既報の3型HEVとの全塩基配列での相同性が81-83%に過ぎない2株を報告し、ブタに蔓延するHEV株が多様性に富んでいることを示した。さらに、末梢血中のIgAクラスHEV抗体とHEV RNAの出現が相関していることを示した。 2.12県87頭の野生イノシシを調査し、2頭(2%、山口及び徳島)からHEV RNAを検出した。佐賀のイノシシ株を加えたHEV3株の全塩基配列を決定し、日本のイノシシに多様性に富むHEV株が感染しており、それぞれに近縁な国内のE型肝炎患者及びブタ由来株が存在することを示した。 3.モンゴル国及びインドネシア国バリ島のブタ各243頭及び101頭を調査した結果、IgGクラスのHEV抗体陽性率は92%及び57%、HEV RNAの陽性率は37%及び5%であった。分離されたHEV株はそれぞれ3型及び4型に属し、地域固有の土着株であると想定された。また、バリ島の散発性E型肝炎患者から、ブタ由来株と97-98%の塩基配列の相同性を示す4型HEV株を分離した。これらの結果は、発展途上国においても人畜共通感染症としてのE型肝炎が存在していることを示すものである。 4.野生イノシシの肉を摂食後にE型肝炎を発症した4症例(愛知)から4型HBV株を分離した。同地域のイノシシ2頭からこれらと99%以上の相同性を示すHEV株が分離されたことから、イノシシからヒトへのHEV感染の可能性が強く示唆された。 5.HEV株の塩基配列の多様性を踏まえ、1〜4型の全ての遺伝子型のHEV株に対応し、ヒトのみならず、ブタ、イノシシ等の動物由来のHEVをも高感度に検出可能なRT-PCR系を開発した。
|