本研究は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)がカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(HHV-8、KSHV)によるカポジ肉腫の発症を促進する新規な機構の存在を明らかにすることで、その制圧に貢献することを目的として行った。 今年度は、HIVのゲノムの複製に必須であるTatタンパク質と相互作用する宿主タンパク質であるI-mfaドメインタンパク質(I-mfa及びHIC)が、KSHVの潜伏感染関連核抗原であるLANAと細胞内で相互作用し、LANAの細胞内機能にどのような影響をおよぼすのかを解析した。 まず、免疫沈降実験から、I-mfaドメインタンパク質とLANAとの相互作用にI-mfaドメインタンパク質のカルボキシル末端の機能領域であるI-mfaドメインが必要であることをまず明らかにした。そして、I-mfaドメインタンパク質は、細胞内でLANAとGSK-3βの相互作用に影響をおよぼすことで、LANAによるWntシグナル依存的な転写促進を抑制する可能性を強く示唆する結果が得られた。 また、LANAは、p53依存的な転写を強く抑制することが知られているが、I-mfaドメインタンパク質は、LANAと相加的にp53依存的な転写を抑制した。 以上のことから、I-mfaドメインタンパク質は、LANAによるWntシグナルの調節を特異的に抑制する宿主タンパク質であり、KSHVによる細胞がん化の抑制に大きな役割を演じていることが強く示唆された。
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