研究課題
基盤研究(C)
重症急性呼吸器症候群(SARS)の原因ウイルスであるSARSコロナウイルス(SARS-CoV)は、ラットへ実験的に感染させてもウイルスが十分に増殖できない。本研究では、ラットに馴化したSARS-CoVを分離することを目的とし、SARS-CoVをラット型レセプター(ラットACE2)を発現する哺乳培養細胞で継代培養した。また、得られたウイルスの変異を解析し、SARS-CoVが異なる動物種へ馴化する分子メカニズムについて検討した。ラットACE2発現細胞で15代継代したウイルス(ratP15)は、ラットACE2発現細胞では、親株であるFrankfurt-1に比べ100倍以上高い増殖効率を示した。一方、mutantラットACE2発現細胞では、ratP15とFrankfurt-1は同程度に増殖した。ratPl5のS遺伝子にはS1ドメインのレセプター結合部位(RBD)に変異がなく、S2ドメインに2カ所アミノ変異が認められた。そのうち1カ所はHeptad repeatドメインに位置していた。また、SARS-CoVS蛋白質を被ったVSVシュードタイプを用いた解析では、これらの変異S蛋白質を被ったシュードタイプはratACE2発現細胞に高い感染性を示した。本研究により、ラットACE2発現細胞に高い感染性を示すSARS-CoVを得ることができた。従来、S1ドメインのRBDの変異が馴化に重要であると考えられていたが、ratP15ではS2ドメインにアミノ酸変異が認められたことから、SARS-CoVの他動物種への馴化には、RBDの変異のみならず、S2ドメインの変異によるS蛋白全体の構造変化なども関与すると考えられた。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (7件)
Arch Virol. 152
ページ: 1019-1025
Arch Virol 152
FEMS Immunol Med Microbiol. 46
ページ: 236-243
J Med Virol. 78
ページ: 1509-1512
Biochem Biophys Res Commun 347
ページ: 261-265
FEMS Immunol Med Microbiol 46
J Med Virol 78