研究課題
基盤研究(C)
体外から侵入しようとする感染性病原体に対して最初のバリアーとして機能するのが、体の外面を覆う「皮膚」である。皮膚には定常時にもメモリーT細胞が存在するが、感染時にはエフェクターT細胞が速やかに動員され感染防御において中心的役割を担う。また、皮膚に浸潤するT細胞はアレルギー性接触性皮膚炎、乾癬、アトピー性皮膚炎などの炎症性皮膚疾患の病因・病態に関与することが示されている。私たちはこれまでに、エフェクター/メモリーT細胞の炎症皮膚への動員は皮膚血管内皮に発現するP-セレクチンとE-セレクチンにより媒介されること、またT細胞上のPSGL-1がP-セレクチンの唯一のリガンドとして機能するだけでなくE-セレクチンのリガンドの一つとしても機能することを明らかにしてきた。しかし、皮膚へのT細胞動員におけるPSGL-1以外のE-セレクチンリガンドの実体については理解がすすんでいない。本研究では、E-セレクチン-IgGキメラタンパク質を用いたアフィニティ精製により、マウスTh1細胞から新規E-セレクチンリガンドとしてCD43を同定した。そこで、CD43が生体内でE-セレクチンリガンドとして機能するか明らかにするため、PSGL-1とCD43の一方および両者を欠損するマウスの解析を行った。その結果、Th1細胞のE-セレクチン結合活性は両分子を欠損する場合に最も低下し、接触性過敏症モデルにおけるこれらの細胞の炎症皮膚への集積も両分子を欠損する場合に最も低下した。さらに、生体内で感作されたリンパ球のE-セレクチン結合活性および炎症皮膚への集積も、PSGL-1およびCD43の両者を欠損する場合に最も低下した。以上から、CD43がPSGL-1と共にE-セレクチンリガンドとして機能し、T細胞の炎症皮膚への移住を媒介することが示された。
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