10代以上にわたって戻し交配し近交系のAIRE欠損BALB/cマウス、AIRE欠損C57BL/6マウスを樹立した。 近交化した結果、同一系統のすべての固体はまったく同じ遺伝子組成を持ち、遺伝学的に純粋なことからAIRE欠損による詳細な免疫学的解析が可能になった。いずれのマウスも12週令で腺組織を中心とする自己免疫疾患を発症した。さらにBALB/c背景のAIRE欠損マウスでは、C57BL/6背景のAIRE欠損マウスでは認められない自己免疫性胃炎を発症した。そこでAIRE欠損BALB/cマウス、AIRE欠損C57BL/6マウスの自己抗体と反応する対応抗原を胎仔胸腺移植法で同定した。 BALB/c背景およびC57BL/6背景のAIRE欠損マウスの胎生14.5日の胸腺を2-デオキシグアノシン存在下で培養し骨髄由来細胞を除いた。得られた胸腺ストローマを胸腺のない、BALB/c背景ヌードマウスあるいはC57BL/6者景ヌードマウスの腎皮膜下に移植した。移植後6週令でレシピエントマウスの血清を採取した。 一方AIRE欠損マウスで病変が認められる肝臓、胃、膵臓、唾液腺の蛋白を野生型BALB/c、野生型C57BL/6から採取し、Western blottingを行い、胸腺移植ヌードマウス血清中の自己抗体と反応する160kDの分子量の対応抗原を確認した。その後2次元電気泳動を行い、プロテオミックスで得られるアミノ酸組成から自己抗体と反応する対応抗原を同定したところ、Carbamyl-phosphate-synthase 1であることが判明した。 AIRE欠損と本研究によって新たに同定された自己抗原にたいする自己抗体産生およびマウス系統による疾患感受性の変化についてはこれからの課題である。
|